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岩澤里美:季刊誌『オルタナ』58号世界のソーシャル・ビジネス 欧州編 スイス 社会的弱者知るツアー 当事者がガイドで好評



スイスの人道支援団体スープリーズ協会が行っている「町ツアー」が、人気を呼んでいる。 研修を受けたホームレス経験者(貧困者)が市民を連れて町を歩き、弱者向けの施設や店に ついて説明する。個人のほか、学校の社会見学、企業の研修としての申し込みも増え、

弱者理解が進んでいる。(チューリヒ=岩澤 里美)


スープリーズ協会は、 ホームレス状態の人が質の高い雑誌を町中で販売して、 収入を得られるよう支援している。雑誌 「スープリーズ」 は1冊約650円で、 うち約300円が販売者の収入になる。2017年は400人以上の販売員が44万部を売り、約1億4200万円が彼らの収入になった。


これに加え、同協会が2013年にバーゼル市で始めた新しい試み 「町ツアー」も、貧困者の自立の一助になっている。 貧困者自身がガイドになり、 町を案内し、 徴収した参加費の一部が収入になるのだ。

「ホームレスの生活」 「生活保護受給者たち」 「虐待や暴力を受けた女性の保護と自立」 などテーマ別にいくつかルートがある。 通年開催で、1回2─2時間半。 5人催行で、 最大定員20人 (参加は14歳以上を奨励) 。 参加費は1人2700─3200円、 学生などは半額だ。 オンライン申し込み状況を見ると3カ月先の予約もあり、 ツアーへの関心の高さがうかがえる。


2014年からはチューリヒ、 2018年からはベルンでもガイドたちが活動中だ。


普段は見えにくい場所へ

チューリヒで 「アルコールや薬物の問題を抱える人たち」 ツアーに参加してみた。担当は、 ガイド歴4年のダニエル・シュトゥッツさん (40代) 。 就職がうまくいかなかったことや、 事故に遭ったこと、ギャンブルや薬物への依存、ホームレスの経験を話し、 多額の負債を返済中であることも隠さず自己紹介した。

弱者用の一時居住施設 (泊まらなくてもホームレスの人は無料で食事や洗濯ができ、ネットも使える) 、 ホームレスの人専用クリニック、 各種依存症の人を支援する施設など、 計6カ所を歩いて回った。それらは繁華街内にあるが、普段は見過ごしていた。


各施設で、 サービスの内容についてシュトゥッツさんが解説し、 施設スタッフがさらに説明を加えることもあった。寝室など見学できない場合もあるが、 利用している弱者たちがいると肌で感じられる。


参加者たちは積極的に質問し、 ツアー後は 「こんなツアーは珍しい」 「説明がとても上手」 「弱者の人たちと向き合えた気分になった」 と話していた。 市民の側の弱者理解が、より広まっていきそうだ。




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